劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』Ⅱ.lost butterfly感想 男女のしがみつく感情、激動の戦闘シーン、美しさと歪な禍々しさに心が震える素敵な映画でした
というわけで劇場版FateHF2章を見てきました。バトルシーンには圧倒され、素晴らしい映像、声優さんが演じるキャラの熱には引き込まれました。待たされて膨れ上がった期待値?ハードルの高さ?そんなものは飛び越えられましたよ。 関係者の方々も言っていますが熱量が半端なく、カロリー消費が激しい作品なので初見なら万全の状態で観ましょう。
まず一言で表すなら最高の流れと最高の構成による愛ある作品ですね。
とりあえず完璧に原作を知っている人に向け、どう映像で伝えるかを考えられ丁寧に作られた作品であるのは間違いない。声がなく映像と音楽のみであっさりしたシーンとかもあるのですが、原作を知っていればすぐにわかる。そして原作を知っていればそうくるかーって唸るシーンの多いこと。限られた尺という不利な点をどう克服して、アニメである利点を最大限活かすのか本当に考えられていると思います。特に「I beg you」のジャケットイラストにもなっている部分…これは意味が分かればなるほどなと唸る。HF2章の制作に関わった全ての皆様お疲れさまでした。
うむ筆が乗ってきた。そろそろネタバレして感想を書いていきたいと思います。
※ ネタバレ注意
劇場版「Fate/stay night [Heaven‘s Feel]」Ⅱ.lost butterfly CM第2弾
第2章は選択と決断をメインとしています。聖杯戦争が破綻し、今までと状況が変わる中で士郎と桜は勿論のこと、みんなが選択を迫られたり、きっかけを与えられたりします。特に士郎は今までの信念を曲げた選択をします。そのことの本当の意味を彼自身が思い知るシーン。振りかざした果物ナイフ片手に静かに号泣する姿。表情が本当にまるで普通の人間のようだ。
一度曲げた信念は曲げ直しても元に戻らない。「ああ、裏切るとも」…人間みたいなではなく彼は人間となったと、見る人に伝えたいのかなと。そしてやはり衛宮士郎はもう桜だけの正義の味方なんだなと。それを成したのが間桐桜というヒロインであるという話。桜もまた選択と決断をするのですが、悪い子であった桜の心と最後のピースとなった間桐慎二がもたらしたものによって別の方向に羽化していく。というわけで2章は慎二が退場して黒桜が誕生するところで終わっていますよ。
退場してしまったが慎二の描写は忘れられないくらい濃い。なんというか間桐慎二というキャラをしっかり描写しつつも、彼は聖杯戦争という戦いにはどこまで行っても蚊帳の外ということを魅せる。この矛盾したテーマをよくもまあ映像に落とし込んだものだと感心しましたね。そしてライダーさんに命令するところは同じような失敗をまたしている。仕方ないけど何も成長していない…。 1章は士郎という主人公にとって慎二とはどういう人間だったのかをしっかりと描いているからこそ、2章での立ち位置が仕上がっているのかなと。これと合わせて舞台挨拶の下屋則子さんと神谷浩史さんのお話が聞けたことは本当に初日に観て良かったと思う点のひとつです。
そして雨の中で桜を抱きしめて桜の味方になる場面
これこそ最初に言った選択と決断を象徴するシーンだと思います。覚悟を決めた士郎が迷いなく桜を抱きしめて見せるシーンはまさに女の子を守ると決意した男のもの。演出から声優さんの演技まで含めて好きなシーンです。うん大好き。
1章の頃から一貫しているのが桜を魅力的にすることに対する一念。銀幕からはそも意思が伝わってくるかのようでした。それに合わせて下屋則子さんがセリフの一つ一つに命を吹き込んで完成されたキャラとなっていると感じました。 桜に関しては丁寧に描かれていて、その積み重ねがもうダイレクトに効いてくる。処女じゃないんですよって台詞もキッチリあって、可能な限りエロシーンを描写するのも好感もてました。最高の間桐桜をありがとう。いや、この言葉はまだ早いか。だってこれから桜は最終章でもっと魅力的になっていくのでしょうから。
バトルがすんごい
色々なバトルシーンがありますが、まあ今回はなんと言ってもヘラクレスvsセイバーオルタのシーンですよね。大幅にボリュームアップや盛られていたなんてチャチなもんじゃない。圧倒されるバトルだった。ハッキリ言ってあの凄さを言葉に出来る気がしない。 見ているとセイバーオルタの極光の凄まじさには魅入られ、蘇生の連続で堕ちた騎士王に食らいつくヘラクレスのかっこよさにはしびれてたぎりました。
変な言い方ですがまるで作品の雰囲気や映画館すら崩壊するのではと錯覚した恐るべきバトルシーンでした。もうこんなの事後処理さん息してないよってレベルですよ。あまりこういう言葉は使わないように気をつけているんですが、ゴッドハンドのシーンはまさに神でした。Fateといえば戦いの話である以上はバトルシーンの魅力は外せないと。そんなことはわかってるぜと言わんばかりに応えてくれたスタッフさん達にありがとうと言いたい。
あとバトルシーンといえば英雄王のシーンですよ。ここはもう戦いというより、どうしようもなくなった桜がどれだけ恐ろしい存在かを見せつけるシーン。期待していたギルガメッシュの会話シーンは劇場では見られませんでしたが、かといってバトルシーンを盛ることもなく「この我を跪かせようとは」って怒るシーンで彼のキャラの魅力を表現できていたのは面白かったです。だって自分の足をちょん切るほどの相手を前にして怒るところそこなんですもん。前述した通り原作を知っている人に向けた作品だからこそカットすべきシーンは勇気を持って大胆にカットしていると感じました。イリヤのローレライもそのひとつ。歌ってるイリヤの映像自体はあったんですけどね。
うんそうなんだ。イリヤのところは省略されている部分もあるんだ。だがフォローしている。それが声はないけど映像としては差し込まれていたり、桜と藤村大河の会話でイリヤが衛宮切嗣が何度も自分に会いに来ていた、会おうとしていたことを知るシーン等になる。
何度も言いますが原作を知っている人に向けられた作品故にこの映画だけで見ればイリヤというキャラはよくわからないかもしれない。だがそれで良い。これは士郎と桜の話、その中でちゃんとイリヤが超絶かわいいのはファンに伝わった。そして最終章であるだろうお姉ちゃんのシーンで号泣しようではないか。イリヤファンの人はあまり見たくないであろうイリヤを突き飛ばすシーン。あれがとてもマイルドになってて良かったというか、ちょっと身構えましたよ。
そう選択と決断はなにも作中のキャラにだけ迫られたものではないのだと思える。士郎が桜を選んだようにこの映画の監督もまた士郎と桜を選んだ。そういう話なのではないでしょうか。 というか劇場版HFは士郎と桜の話を軸にしている作品ということを考えると、覚悟していたよりはイリヤのシーンが多かったと思います。
それと藤ねえの登場は空気壊さないか大丈夫なのかというこちらの不安を杞憂に終わらせたばかりか、イリヤの好感度足りるかなという部分を藤ねえの言葉でフォローしてるだけに収まらず、士郎がイリヤと自分がお互いに切嗣の子と知った上で話すシーンを省略した上で重要な意味を持たせた藤村大河のシーンほんと好き。
アーチャーも抑えるところは描写していた。背中で語るシーンもあったし、士郎を乱暴にぶん投げているのに、イリヤは壊れ物のようにそーっと両手で抱っこして降ろしてるのが面白すぎた。でも一番はやはり凛を助けたあたりからの流れですね。真アサシンを圧倒して、ローアイアスでみんなを守って、最後に凛にむかって「達者でな遠坂」ですよ。凛がアーチャーのこと信頼しているの短いやりとりからでも伝わるし素晴らしき二人だった。でも腕の移植がほぼ事後みたいになってたのは気になったといえば気になったのであった。
前述した「I beg you」のジャケットイラストにもなっているファンシーシーンは途中で察すると意味が見えてくる。川に流れているぬいぐるみがサーヴァントで、飴玉になったのが被害者の男達ですね。あれで流れてるぬいぐるみの数、桜聖杯が回収したのがそうだとすると数が合わないという疑問も、もうひとつの聖杯に回収されたんだなと理解できる。いやしかしここは本当にそう来たかーと。くすくすと歌ってゴーゴー。なんてジャケット絵を用意してくれたんだ!!!という本当に見た人にだけわかるという話。視聴前に裏ジャケ見なくて本当に良かった。
良かったのは細かいシーンも言いだしたらキリがない。凛が桜に姉さんと言われて狼狽えるところも良かったし、間桐臓硯とその蟲たちはおぞましかったし、ライダーさんの食事シーンと「あなたたちの作法は私に合いません」って言い方めちゃんこ可愛かったし、桜の状態を快楽中枢を高揚、崩壊させることで飢えを満たすってわかりやすくしてからのエッチな桜良かったし、映像や声優さんの演技だけに留まらず、音響やら背景やら良かった部分を言いだしたら止まらない。いいところばっか言っていると思われそうなんですが、芋づる式に出てくるのだから仕方ない。なんというか深すぎる作品なんですよ劇場版HFは。
例えば尺が取れないなりに背景描写や演出などにも意味を持たせていると思われるシーンがたくさんある。例えば士郎と臓硯の密談。間桐邸に温室とかそんなんあったんだーって思ってたら須藤監督が舞台挨拶で同じこと言ってたのね。あそこ青い蝶が気になったので調べたらたぶんモルフォ蝶。「美しい」を意味し、毒があるため捕食者はあまりいない。「羽化した成虫」は花の蜜よりも腐った果実、動物の死骸、キノコなどを好む。これ、要するに黒桜の羽化を示しているのかと気がついたら震えた。感想を書きながら反芻してみても、本当に一度で理解できる気がしない作品ですよ。また見に行こう。
というわけでまとめると全部ひっくるめて最高の構成と言ってもいいと思います。普通なら尺の都合で終わっちゃう部分もufotableがそれで妥協せずに用意した考える余地が有り、そして見る側はそのメッセージを感じ取り意味を考える。なんとも真実ファンのための作品なんだと、まとめてしまうとそういう感想になるんですよね。これはもう最終章への期待も高まり安心して待てるなという映画でした。
そして劇場版FateHF2章のラストに最終章の予告がありました。
劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』第3章 spring song 2020年春公開予定です。
舞台挨拶の須藤友徳さん曰く
「スタッフ一丸となって3章の制作に取り掛かります」
「第3章は2020年の春公開です」
「退路は絶ちました」
とのことです。
ここまで作品への愛あるスタンスを見てきたので信頼しかありませんが、このクオリティを落とすことなく最終章をどう魅せてくれるのか?2章が公開されたばかりだというのにグランドフィナーレの映像が今から楽しみすぎて仕方ありません。ありがとうufotable、ありがとう須藤友徳さん、最高の映画を見られた今日という日に感謝します。よし、明日も劇場版FateHF2章を観てきます。
ちょっと興奮しているので感想の文章変なところあるかもですが許してほしい。それではこれにて失礼。以上、『Fate/stay night [Heaven’s Feel]』Ⅱ.lost butterflyの感想でした。
春が来た
春が来た
春が来た