『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ』最終話感想 世界を救い、騎士として綾香を救うため、セイバーは第四の獣にして災厄の獣ビーストと愛歌に最後の戦いを挑む
最終話を飾るのは一人の少女の物語。
>あるところに――ひとりの女の子がいました。
>真理と化した女の子であり、すべてを成せる女の子でした。
>命を、と望めば命を発生さられる。
>死を、と囁けば死を蔓延させられる。
>世界は彼女と繋がっていて、彼女は世界と繋がっていたのかもしれません。
>彼女はおよそ全能でした。
ご存知の愛歌お姉ちゃんである。彼女の出生から現在に至るまでの物語。
生まれたばかりの頃は全能ゆえに退屈で退屈。
未来だって簡単に見れちゃうからこのままではヒトのままでいる意味も感じられず
生命活動すら止めてしまいそうだった彼女。
こうして根源接続者の多くは自分からこの世から去っていくのかもしれない。
けど愛歌お姉ちゃんはそうはならなかった。
「自分の未来は見ないようにする」
自分自身に制限をかける。要は縛りプレイで生きていくことにしたのだ。
そうして生きた彼女は感情なんて何もない生きた亡霊のように過ごしてきた。
でも楽しみがひとつだけあったから彼女はそれまで頑張って生きてきた。
それは未来視を縛る前に知った「愛歌はいずれ恋に落ちる」という未来。
彼女は世界と時間の糸であやとりでもするように事象を編纂して未来と可能性を好き放題にできる。
でも恋ってどんなものか知りたいからそれをしなかったのだ。
まあそうは言ってもどうせ何も感じないだろうけどという諦めもあった。
だから聖杯戦争当日になっても期待などもう無く憔悴していた女の子の姿がそこにはあった。
だけどまあ罪深きイケメン王子はそんな女の子の予想を遥かに上回るものだったというワケだ。
召喚してみたら彼女はひと目で恋に落ちてしまった。
愛歌はこの日、運命に出会ってようやく世界に生まれ落ちてしまったのであった。
そうして1991年の聖杯戦争に参戦した彼女は勝利を重ねてついに願い事を叶える寸前まで来た。
妹である綾香も生贄寸前というところである。
二人の父である沙条広樹は魔術師として、親としてどちらの娘も愛し庇護する対象。
愛歌が生まれた時は他家の魔術師に死にながら生きてると揶揄されようとも気にせず慈しんだ。
綾香についても例え魔術の才能が姉よりも劣ると分かっていても慈しんで魔女のガーデンも与えた。
長女も次女も、どちらかなど選べるはずもない。
だから綾香を助けてできるなら言葉で愛歌に馬鹿な真似をするのをやめさせようと立ち上がる。
しかしその決意を綾香の目の前であっさりと捻り潰してしまった愛歌お姉ちゃんであった。
やはり全能者とヒトが分かり合うのは難しいと痛感させられる。
平たく言って愛歌おねえちゃんひどくてこわい。
でも感極まっているモノも居た。
大聖杯で胎動するモノ。
人を殺す権能として定められた第四の獣。
災厄の獣。ビーストである。
黙示録云々はともかく人を殺す権能だの言われてた時はおやってなったし。
こうして第四の獣とか災厄の獣というワード見るとFGOと繋げて反応せざるを得ない。
このビーストは愛歌のことを全能を有していようと所詮はヒトの亜種だろうと疑っていた。
だが立ち振る舞いを見てそんな疑問は消失して偉大なる母として認めてしまった。
歓喜して愛歌のことママって連呼するビースト。ここに最凶の組み合わせが誕生した。
もうあとはビーストが生まれ落ちれば全てが終わる、そんな時…
全てを終わらせたのはセイバーであった。
唐突に訪れた終わりに愛歌もビックリである。
まさか自分がセイバーに殺されるだなんて思わなかったと。
でも彼女は最期まで恋する女の子だった。
これで終わりならばせめてセイバーには笑顔を見せて愛の言葉を囁く。
そうして彼女は妹を落とそうとした地獄の釜に自分から落ちていくのであった。
セイバーとの温度差というか予想以上に綺麗な退場に納得いかない愛歌クオリティ。
こうしてセイバーは愛歌を仕留めたが世界と綾香を救うには一手足りなかった。
不完全ながらも災厄の獣は動こうとしているし綾香をそれから救う力が必要なのだ。
マスターを失ってしまったしまったセイバーにはそれは叶わぬハズだった。
ジキル「それなら、ここで終わってしまう道理はないね」
アーラシュ「理屈っぽいバーサーカーってのも、なあ」
「それはそうとな。セイバー。お前さん、まさか、ここで諦める訳じゃあるまい?」
オジマンディアス「世界を救え」
「認めよう。余は神君であるが暴君の顔も持ち合わせているが故に、
こうも醜く歪み果てた世界なぞはどうにも救いきれぬ。
特に、これなる当世、繁栄と消費をあまりに貪り過ぎている。
我が豪腕を思うさま振るうには、あまりにも頼りなかろうさ」
「……故に。此処では貴様が救え、勇者よ」
ブリュンヒルデ「シグルド。いいえ、聖剣を担うセイバー。すべてをあなたに託します」
アーラシュ「それに、あれだ。騎士ってのは、貴婦人を守るものなんだろう?」
消えかけたセイバーを少しだけ現世に留めたのは他のサーヴァント六騎からの激励の言葉である。
ちなみにパラケルススと静謐ちゃんは言葉は発してないけどちゃんと居る。
まさか最後に英霊たちにこんな熱い展開を演出されるとは思わなかった。
でもビーストを御するなら七騎の守護者が必要とれるっていうあれからすると納得の展開でもある。
いざ世界を救うため、綾香を救うためにセイバーはビーストへと最後の戦いを挑む。
不完全とはいえビーストの触腕は直径10メートルにも及び対軍宝具にも等しい魔力を有していた。
それが二十三撃。普通なら勝ち目なし。
だがセイバーが剣を薙ぎ払うだけでそれらは全て破裂しておしまい。
しかも片手には綾香を抱えているから片腕による攻防でこれである。強い。
ビーストの攻撃を吹き飛ばして一気に決着をつけるのはエクスカリバー。
それも聖剣の真なる力を解放しての一撃。
十三拘束解放(シール・サーティーン)――円卓議決開始(デシジョン・スタート)!
「是は、己よりも強大な者との戦いである」――ベディヴィエール承認
「是は、一対一の戦いである」――パロミデス承認
「是は、精霊との戦いではない」――ランスロット承認
「是は、邪悪との戦いである」――モードレッド承認
「是は、私欲なき戦いである」――ギャラハッド承認
「そして、是は、世界を救う戦いである」――アーサー承認
説明しよう!聖剣には十三の拘束があってその真の力を封じているのだ。
だがこうして円卓議決によって過半数可決で完全開放することができるのだ!
この場合は惜しくも半数を越していないので完全な開放には至らなかったが
他の蒼銀英霊の六騎が聖剣の柄を支えてくれて擬似開放に成功し聖剣を振り切る。
こうしてついにビーストを滅し、綾香を助けることにも成功したのであった。
そこでセイバーは1991年より姿を消して戻ってきたのは過去のブリテン。
モードレッドに致命傷を受けてベディヴィエールに看取られんとするシーンです。
聖杯戦争のことを夢を見ていたと語るのはアルトリアさんと一緒。
湖に聖剣を投げ入れろとベディヴィエールに命じるのも一緒。
「私は最早、王ではない。故国を救うことは遂に叶わなかった私だが……
今ひとたび、私は騎士として在ろうと思うのだ。ベディヴィエール」
「理由を……お尋ねしても宜しいですか、我が王」
「無論だ」
――ただひとり、僕には守らなければならない貴婦人がいるのだ、と
セイバーの戦いはまだ続く。というところで完結です。
桜井光さんは蒼銀のフラグメンツという長い連載お疲れ様でした&ありがとうございました。
2013年から感想を書き続けてきた管理人も感慨深いです。
最後に小説の最終巻に収録されている書き下ろしを読めば本当の完了。
ただ完結ではありますが、ここから先のプロト本編を見たくなるような終わりでした。
それが展開されるかどうかは乞うご期待というところですね。 そろそろプロトタイプ勢の本格的な活躍とか見たいので楽しみにしています。
何というかすごい・・・