『Fate/Zero』最終話感想 何も成し遂げることもなく、何を勝ち取ることもなかった切嗣がたったひとつ最後に手に入れた安堵を胸に真じろう先生のコミカライズ完結
ヤングエース2017年6月号より
衛宮邸での優しく穏やかな時間。
衛宮切嗣の生涯はいつも出会いと別れはセットで失うばかりだった。
だが士郎に出会ってからの切嗣は失うことと無縁となり皆が笑顔を浮かべている。
明らかなスジモンが居ますけどみんないい人たちなんですよ。
そんな生活の中で切嗣は幾度となく国外に出かけるようになる。
士郎も不思議がっているが彼は世界中に冒険に出かけるというのだ。
かつての理想に燃えてた頃と違い半病人も同然なのにわざわざ単身で旅に出る切嗣。
それもその筈、旅行と称してはいるが冬木の港から貨物船に身を潜めて出国していたのだ。
極寒の地を冒険
言うまでもなく行き先はドイツの本家アインツベルンである。
かつての切嗣とてまだ全てを失ったわけではない。まだ愛娘のイリヤが居る。
約束を果たすために彼はイリヤを迎えにやってきたのだ。
しかしユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンは森の結界を開くわけがなかった。
切嗣にはもう少しで手に入る聖杯を台無しにした裏切り者なので怒ってます。
とはいえ裏切り者を始末するかといえばそんなことはしない。
イリヤと会えないようにすることが最大の罰であると考えたのだ。
こんな時ばかり的確で効果的なやり方するんだからアハト翁め。
実際それは切嗣に何より効いた。
何度も何度もやって来ては破れない結界を前に右往左往するのみ。
そうして切嗣は数年かけて残り少ない余命をすり減らしていくことになる。
かつての魔術師殺しならばイリヤの救出はできたという。
だが魔術回路の大部分の機能を失った今の切嗣には結界を破ることも出来ない。
無念ではあるがイリヤの救出は成らなかった。
とうとう切嗣はイリヤと再開することもできずに終わってしまう。
もしもこの時に救出が成功していたら優しい世界にイリヤが迎え入れられたのだろうか。
国外へ出かけることもできなくなり散歩する体力すらもう残っていない切嗣。
だがやるべきことはやっていた。それは第五次聖杯戦争を防ぐための措置。
爆薬をやりくりし、数年がかりで大聖杯のある地脈に手を加えていたのだ。
この仕掛けは30~40年の間には破裂してごく局地的な大地震を円蔵山直下に引き起こす。
そうして大聖杯が設置されている龍洞を崩落させるというもの。
切嗣の目論見とは違い、第五次聖杯戦争が早期に勃発してしまったのはご存知の通りである。
とはいえそれは別の話。
切嗣としては懸念のひとつを潰したようなものである。
もはや半病人でありながら精一杯そこまでできたのがすごいのだ。
だが切嗣には最大にして一番の心配事が残っていた。
士郎のことである。
変わらず飽きもせずにめげもせずに鍛錬を続ける士郎。
だって士郎は明確な目的や楽しみのためにしているのではないですからね。
これを身に付ければいずれは誰かの為になると思ってのこと。それが理由。
そして士郎は切嗣に憧れている。
もしかしたら自分と同じ道を歩くのではないか?
それが心配で切嗣は考え込んでしまう。
もう散歩に出かけることもできない。
家にこもって漫然と考え込むことが多くなった切嗣。
縁側に座っていることすら辛くて転がってしまう。
切嗣に残された時間はもう少ない。
月下の誓い
素直に諦められていたらどれほど良かったか。
だが少年は切嗣が諦めてしまったモノになると誓いを立てる。
切嗣もまた遠い昔に誰かに言おうとして果たせなかった言葉。
長い間忘れていた始まりを切嗣は思い出すことができた。
士郎にとって大事な月下の誓い。無垢な祈りのカタチ。
それは切嗣にとっても疵を癒してくれるものでした。
始まりの思い出がこんな綺麗なら士郎は自分のようにはならないだろうと。
ああ―――安心した
士郎に与えられた思い出という救済と未来を信じて目を閉じる。
享年34歳。衛宮切嗣は最後に安堵してこの世を去ったのであった。
漫画版「Fate/Zero」ついに完結
振り返ってみれば数年という連載の中で小説を忠実にコミカライズされてましたね。
それだけでなくドラマCDのエピソードや描き下ろしのネタなど色々とありました。
それを追いかけるのは楽しかったし感想を書くのも面白かったです。
長い連載お疲れ様でした。そしてありがとうございました真じろう先生。
これからもご自身の連載や型月関係のお仕事など頑張ってください。応援しております。
………あぁ…